White (2022)


「白があるのではない。白いと感じる感受性があるのだ。だから白を探してはいけない。白という感受性を探ることによって、僕らは普通の白よりももう少し白い白に意識を通わせることができるようになる。」これは日本を代表するグラフィックデザイナーである原研哉の言葉だ。

僕は2019年の間、自分が知覚する「白」を追い求め写真に記録していった。単なる表面的な色としての白ではなく、意識と無意識の狭間にある、曖昧なイメージと空白としての空間感を記憶に残す作業を行うことにした。僕にとって白はガラスの透明に近しい現象で、前者は色のようであり色ではなく、後者は逆に色ではないようで実は色である、という関係性と捉えている。

いずれにせよ、白は原が言うようにひとつの感受性なのだ。たとえて言うならば、それは色をもたない雨の音と匂いのように、僕らの五感に訴えてくるネイチャーとも言えるだろう。静かに、清らかに白い意識に思いを馳せることで、白はいっそうその詩的な佇まいと曖昧な輪郭を、ぼんやりと僕らの前に浮かび上がらせていくのだ。 

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